【東大数学分野別解説】#14 アプローチが分かれやすい "ベクトル"
連載:東大数学分野別解説
2022.03.03
文系でも理系でも "ベクトル" は入試の範囲となります。
どういうわけか,図形が絡む分野は苦手とする受験生は多い印象で,差がつく分野といえるでしょう。
というわけで今回は,ベクトルの問題をピックアップします。
問 題 1
において とする。 の内部の点 が
を満たすとする。
(1)
を求めよ。 (2)
を求めよ。
問 題 1 の 解 答
(1)

一般に,
と書くことができる。以上
よって
(2)

青色の円は中心
これら
となる。
問 題 1 の ポ イ ン ト ・ 補 足
初見だと問題文の条件式は扱いにくいかもしれません。あるベクトルをそのベクトルの長さで割ったものは,向きを保った単位ベクトルになるというのがポイントです。正射影を学習している人はすぐ気づけるでしょうが,気づかない人も多い印象です。
(1) ができれば (2) はさほど苦労しないでしょう。実際の試験でも扱いやすい解法を紹介しましたが,ほかにも色々な求め方があるかもしれません。ぜひ考えてみてください。
なお,本問の点
問 題 2
を原点とする座標平面において,点 を通り,線分 と垂直な直線を とする。座標平面上を点 が次の つの条件をみたしながら動く。 条件1:
条件2:
点と直線 の距離を とし,点 と直線 の距離を とするとき このとき点
が動く領域を とする。さらに, 軸の正の部分と線分 のなす角を とする。 (1)
を図示し,その面積を求めよ。 (2)
2019年 東大 文系数学 第2問のとりうる値の範囲を求めよ。
問 題 2 の 解 答
(1)
条件1は
であるため,条件2は
と求められる。条件1が成り立っているとき
と整理できる。以上より,求める領域を表す不等式は
であり,これを図示すると次図の色の濃い部分のようになる。

そして,この領域
と計算できる。
(2)
放物線
となり,これが原点を通るときの
一方,原点と点

以上より
となる。
問 題 2 の ポ イ ン ト ・ 補 足
問題文にベクトルが登場していますが,すぐに
(2) では
問 題 3
を原点とする座標平面を考える。不等式
が表す領域を
とする。また,点 が領域 を動くとき, をみたす点 が動く範囲を とする。 (1)
をそれぞれ図示せよ。 (2)
を実数とし,不等式
が表す領域を
2019年度 東大 文系数学 第4問とする。また,点 が領域 を動くとき, をみたす点 が動く範囲を とする。 は と一致することを示せ。
問 題 3 の 解 答
(1)

次に

(2)
点
次に,点
となるため,
以上より
問 題 3 の ポ イ ン ト ・ 補 足
(1) のように,ベクトルの終点の存在範囲を図示する問題は,近年の東大数学において文理問わず頻出です。本問のほかには,たとえば 2021 年度の理系数学第 2 問があります。
(2) はさまざまな説明方法があると思いますが,解説では
ま と め
東大数学の中から,ベクトルが登場する問題を 3 つピックアップしました。
ただ,内積や垂心の位置,三角形の面積を求めるといったド定番の問題ではなく,あえてちょっとずれた問題ばかりにしてみました。
問題 1 のように平面図形の点の位置を決定するのに用いることもあれば,問題 2 のようにすぐにベクトルが消えてしまうこともあり,そして問題 3 のように点の存在領域を求めるためにフル活用することもあります。
使えるときはフル活用し,他の手段が優れているときはさっさとそれに移行する,という使い分けが大切です。
微分や積分などと異なり "とりあえずこれをこうやって計算すればいいんだよ" というモノが与えられていないのが図形問題の難しいところであり,また魅力でもあります。
たくさん問題演習を重ね,適切なアプローチをとれるようにしましょう!