理系のための東大文系数学 1995年 第4問(器はどれくらい傾いている?)
連載:理系のための東大文系数学
2021.11.26
今回は結構古めの問題をピックアップ。
現行課程でギリギリ 数学Ⅱ の積分における発展事項くらいの内容ですが,実質 数学Ⅲ の範囲の問題です。
東大理系用の問題とするには軽すぎですが,数学Ⅲ の積分を習いたての高校生にはちょうどよい問題かもしれません。
問 題
半径 $1 \, {\rm cm}$ の半球形の器が水平から角 $\theta$ だけ傾けて固定されている。ただし $0 < \theta < \displaystyle\frac{\pi}{2}$ とする。この器に毎秒 $\displaystyle\frac{\pi}{18} \, {\rm cm^3}$ の割合で水を入れるとき,入れはじめてから $3 + \cos^2 \theta$ 秒後に器から水が流れ出した。このときの $\theta$ の値を求めよ。
1995年 東京大学 前期二次試験 数学(文科) 第4問
解 答
水が流れ出した瞬間の容器内の水の体積は,半径 1 の球を, 中心からの距離が $\sin \theta$ である平面で切ったときの,球の中心を含まない方の立体の体積に等しい。
半径 1 の球を単位円の回転体と考えれば,水の体積は,
$\displaystyle\int_{\sin{\theta}}^1 \pi \left( \sqrt{1-x^2} \right)^2 dx = \frac{\pi}{3} \left( \sin^3{\theta} - 3 \sin{\theta} +2 \right)$
これが $\displaystyle\frac{\pi}{18} \left( 3+ \cos^2 \theta \right) = \frac{\pi}{18} \left( 4 - \sin^2 \theta \right)$ に等しいから,
$$
\begin{align}
\frac{\pi}{3} \left( \sin^3{\theta} - 3 \sin{\theta}+2 \right) = \frac{\pi}{18} \left( 4-\sin^2{\theta} \right) \\
\Leftrightarrow \left( 2\sin{\theta}-1\right) \left( \sin{\theta}+2 \right) \left( 3 \sin{\theta}-4 \right)=0
\end{align}
$$
$|\sin \theta| \leqq 1$ より $\sin \theta = \displaystyle\frac{1}{2}$ であり,$0 < \theta < \displaystyle\frac{\pi}{2}$ であるから $\underline{\theta = \displaystyle\frac{\pi}{6}}$ となる。$\quad \cdots 答$
コ メ ン ト
球と平面,円と直線の位置関係は,中心からの距離のみで決まることを改めて強く意識しておきましょう。
図が傾くとそれが見えなくなってしまう人がどうも少なくないようです。
また,三角関数についての 3 次方程式の解を求める場面も,地味ながら手を止めてしまいがちです。
見かけが若干複雑なので,すぐに計算ミスばかり疑ってハマってしまうようなのですが,具体的な値を求める問題であれば,それが正しい式なら因数分解できるはず。
一般的な問題集ではなかなか出会わない場面かもしれませんが,3 次方程式を同様の流れで解くことは東大入試で時折登場します。留意しておきましょう。