【東大数学分野別解説】#16 難しくて奥が深い "軌跡・領域"
連載:東大数学分野別解説
2022.03.17
問 題 1
座標平面上の 1 点
2011年 東大 文理共通問題をとる。放物線 上の 2 点 を,3 点 が を底辺とする二等辺三角形をなすように動かすとき, の重心 の軌跡を求めよ。
問 題 1 の 解 答
3 点
となる。
をみたすから,さきの二等辺の条件を
となる。また,2 式の組
と同値である。したがって,
の解である。
であり,これより重心

問 題 1 の ポ イ ン ト ・ 補 足
文理共通での出題でしたが,初見で解くのはなかなか難しい問題だったはずです。
軌跡の問題では,文字消去をすることにより軌跡の必要条件を求めることが可能ですが,それだけでは軌跡を求めたことにはなりません。
文字消去により得られた曲線上の点の全てが軌跡に属するかを確認する必要があるためです。
本問でもまさに,直角双曲線の全部ではなく一部だけが軌跡となりました。
問 題 2
複素数
に対して整式 を考える。 を虚数単位とする。 (1)
を複素数とする。 が成り立つとき, をそれぞれ で表せ。 (2)
2021年 東大 理系数学 第2問がいずれも 以上 以下の実数であるとき, のとりうる範囲を複素数平面上に図示せよ。
問 題 2 の 解 答
(1)
であり,これより
を得る。
(2)
(1) の結果を用いると
となるから,
と変形できるので,
まず
次に

問 題 2 の ポ イ ン ト ・ 補 足
逆像法ばかり扱っていると,図形をそのまま動かして領域を求めるというアプローチを忘れてしまうかもしれません。
本問も逆像法で答えを出すことはできるでしょうが,このように図形をそのまま動かしてしまう方が明快だと思います。(曲線的な移動が全くありませんので。)
本問のほかにも,2019年の文系数学第4問で,図形を動かして領域を求める問題が出題されています。
問 題 3
座標平面の原点を O で表す。線分
上の点 と,線分 上の点 が,線分 と線分 の長さの和が となるように動く。このとき,線分 の通過する領域を とする。 (1)
を をみたす実数とするとき,点 が に入るような の範囲を求めよ。 (2)
2014年 東大 文系数学 第3問を図示せよ。
問 題 3 の 解 答
線分
点
である。この
となる (最右辺を
のときである。また,
のときである。以上を踏まえ,
(i)
(ii)
(iii)
点
(2)
(1) の結果の範囲 (

問 題 3 の ポ イ ン ト ・ 補 足
難関大対策の数学を勉強していると,逆像法が目立ち気味で,本問のようにシンプルな順像法が思いつかないかもしれません。ただ,考えてもみれば軌跡・領域を求める基本 (自然な手順?) は順像法なので,まずはこれをしっかり勉強すべきなのかもしれませんね。
ほかにも,2015 年度の理系数学第 1 問が順像法による攻略が可能です。
"直線
参考問題
東大の数学では,軌跡・領域の問題がほかにも多数出題されています。
参考までに,いくつか問題例を載せておきます。
1 辺の長さが 1 の正六角形
2017年 東大 文系数学 第2問が与えられている。点 が辺 上を,点 が辺 上をそれぞれ独立に動くとき,線分 を に内分する点 が通りうる範囲の面積を求めよ。
を実数の定数とする。実数 が
をともに満たすとき,
2013年 東大 文系数学 第3問の最小値を求めよ。
座標平面上の 2 点
が,曲線 上を自由に動くとき,線分 を に内分する点 が動く範囲を とする。ただし, のときは とする。 (1)
を をみたす実数とするとき,点 が に属するための の条件を を用いて表せ。 (2)
2007年 東大 理系数学 第3問を図示せよ。
まとめ 〜軌跡・領域のポイント〜
今回は,
- 問題1:逆像法
- 問題2:順像法(図形を動かす)
- 問題3:順像法(関数の値域を求める)
という 3 パターンの問題をご紹介してみました。
軌跡・領域の問題は大変奥深く,難易度も高めになりがちです。
その分差がつきやすい分野でもあるので,高校数学の未習範囲がなくなり,基礎的な力が付いてきたらぜひ重点的に対策してみてください。
さまざまな種類の問題を解いたり,同じ問題を複数のアプローチで解いてみると,理解が深まることでしょう。